第35回ベストプラクティス福岡セミナー報告

今回のテーマは人事の科学。講師二人が人材の採用と育成について語った。まず、株式会社クロックアップの高橋朋成氏が「保険代理店における『選ばれる人材採用』について」のタイトルで、人材を確保する手段や現状、世代別人材選別の考え方、保険代理店が求める人材について述べた。採用は、候補者が仕事に求めていることを知ることから始まる、そして、採用とは「選考でなく、夢を語り、戦略を語り、同志を集めること」である、と氏は言う。ミレニアル世代が仕事に求めていることとして、1)自身の能力を生かすこと;2)経済的に豊かな生活を送ること;3)楽しい生活をおくること;4)社会の役に立ちたい(日本生産性本部調べ)を挙げていた。
次の講師は株式会社ディエスエーの加藤陽祐氏。タイトルは「保険代理店を科学し、人材の採用と育成を『可視化する』こととは?」。日本の現状認識から始まった。課題として、1)人口減少社会への対応;2)国際競争力の維持強化;3)ワークライフバランスを取り上げている。そのためには生産性を向上させねばならい。その具体的手段として「データサイエンス」の必要性を説いた。人材に関する間違いによるコストは“従業員の年収の15倍”である;履歴書とは“人物の成功話を飾りたて、失敗談を排除したもの”である;採用のものさしとして“現従業員の思考や能力などを正しく把握すること”等々、的を得た提言が多い。資料の多さに比して、時間が足りなかった。人事の科学については、11月の年次大会でもテーマとして取り上げましょう。
「当社の経営現状報告」は今回で第10回。今回の報告者は EIC保険エージェンシー株式会社の遠藤義之氏と株式会社インシュアランスサービスの清水丈嗣氏である。EIC保険の経営ビジョンは、地方代理店のモデルケースとなること、そして、高品質で高価値の保険とサービスを提供する専門家集団であることだ。法人顧客、特に、運送業、建設業、製造業を得意としている。運送業者向けのセミナー、安全運転講習会、コンサルティングの提供を行っている。人材採用と育成については、会社として必要な人材を明確にすることが大事であることを強調した。
インシュアランスサービスの設立は1975年、現在社員数は105名、グループ(株式会社RMJホールディングス)全体の社員数は184人。清水氏は2015年にRMJホールディングスの取締役社長に就任している。業績の推移として2009年から2016年2月までの、損保手数料、生保手数料、支出、経常利益、社員数、生産性の数字、更にその時々の社内の出来事を加えてグラフ化している。顧客の規模別ポートフォリオの変遷には感心した。収益の安定性の改善には顧客の分類、管理、処理は必須である。グループ会社の一つ、日本アイラック-事故処理、海外緊急大事故支援サービス、顧客サポート・サービスを行う会社-の業務説明があった。
株式会社ウィッシュの吉倉弘氏が米国研修報告を行った。エージェンシー、保険会社、IT会社、出版社などの訪問記、更に、受講したセミナーの内容について詳細な報告をした。最初の訪問先アプライド社は全米最大のエージェンシー管理システム開発会社である。現在同社のシステムを利用するエージェント数は14万人を超える。保険会社とのインターフェイス、リアルタイム、ペーパーレスでエージェントが業務を遂行できるのは、同社のシステムに負うところが大きい。午後訪問したのはホートン社。従業員数350名、手数料収入63億円の大規模エージェンシーである。規模ではこのホートン社、業務内容についてはサンディエゴのキャビナック・アソシエイツが今回の目玉であったのかもしれない。C N A保険会社では歓待され、主要業界誌ではインタビューを受けた。印象に残る米国研修であった。吉倉氏は、シカゴとサンディエゴの数多くの写真をIIABJに提供してくれました。ありがとうございます!