IIABA年次大会リポート

2012年4月23日~4月28日

 
写真提供:TMSN net

 24日最初の訪問先A.M.ベストには予定より45分ほど早く到着。先ず、評価査定部門のSVPモッシャー氏による同社の概要説明。A.M.ベストはアルフレッドB.ベスト氏が保険会社の財務評価を行うべく設立した会社である。1989年のことである。1906年のサンフランシスコ地震の際、氏は弟とSFに赴いた。このSF地震は、被保険損害としては米国の歴史上最大の災害であった。氏は保険会社のクレーム対応や支払い状況を監査し、報告書にまとめた。それを一冊1ドルで販売、25万冊を売り上げた。購入したのは主に保険エージェントであった。25万ドルは今の金額にすると、580万ドル(5億8千万円)、これを機にA.M.ベストは拡大した。
 概要説明の後、同社のスタジオでインタビューを受けた。トピックは日本損保会社のM&A、日本が直面している問題について。次に会議室に戻り格付評価方法について同部門のマネジャーとVPによるプレゼンテーションを受けた。参加者より良い質問が多く挙がり彼らは喜んでいた。
 午後はAFS社を訪問。同社は家族経営のエージェンシー二社の合併によって設立。それぞれは1950年代に設立されている。社員数14人。内二人はオーナーのエイハート氏の息子と娘でバージニア州に設立した支店を経営している。手数料収入は150万ドル(1億5千万円)、内訳は企業保険51%、個人保険44%、従業員福利厚生給付プラン5%である。エイハート夫人は大手ブローカー、ギャラガー社のサープラス・ライン・ブローカーである。従って、難しいリスクはエイハート夫人に付保先の探索を依頼する。プロデューサーとCSRの仕事の分担はなく、開拓してきた本人が顧客対応を行っている。この規模のエージェンシーの場合、珍しくない。
 翌朝8時30分にフィラデルフィアに向けて出発。訪問先グラハム社が手配したレストランで昼食。グラハム社の社長とV.P.二人に加え、東京海上日動からフィラデルフィア保険会社に出向している野本氏にも昼食に参加頂いた。グラハム社は、1950年設立、従業員数150人、手数料収入$36,500,000(36億5千万円)、一人当たり収入2千430万円。不景気にも関わらず増収している。素晴らしいのは同社の顧客数が200社であることだ。顧客一社あたり収入の高さがわかる。アカウント・ラウンディングが徹底しているのだ。もう一つの特徴はリスクの高い、保険の要求が複雑である顧客をターゲットにしていることである。それは従業員の役職別の人数に表れている。クレーム・コンサルタント10人、安全コンサルタント6人、トレーニング専門家7人。新規採用者はこのトレーニング専門家と各部門の専門家によって3年間トレーニングを受ける。もう少し時間があれば、クレームコンサルタントやアカウント・マネジャーの話を聞くことができたのに、残念。
 その日、ワシントンD.C.のグランドハイアット到着は午後6時。5時半からのレセプションには間に合わなかった。その日は参加者全員の会食。
 翌日26日7時から朝食会。議員二人のスピーチ、業界に貢献したエージェンシーへの表彰に続き、日本からの参加者のためのセミナーは10時開始。今回の主題は、『米国独立エージェンシーの現状』『エージェンシー・テクノロジー活用の現状』『従業員福利厚生給付プランの現状』『保険業界の米国および国際動向』の4点であった。先ず、米国エージェントの現状。M&Aによるエージェンシー数の減少を補うほどのエージェンシーが新設されている。その数、この2年間に4千社、多くが専属からの転向(?)である。保険会社に対する満足度は上昇している。
 二番目はアンジェリン・ツルーテル氏(元ACT会長)による『テクノロジー活用の現状』;ペーパーレス、リアルタイム、ダウンロード、アップロード機能の活用が進んでいるとのこと。参加していない保険会社に導入を勧めている;これらの機能を利用できない保険会社とは委託契約を解約するエージェンシーもいるとのこと。同時にITを活用していない、エージェント(高齢の経営者、テクノロジーに疎い)への教育に努めているとのこと。また、SNSをマーケティングに活用するエージェンシーが増えているとのことだ。
 『従業員福利厚生給付プランの現状』はいつもIA機関紙で生保年金の記事を書いているデイブ・エバンズ氏(CFA)が講師を務めた。政府による医療保険メディケア・メディケイドは2024年には資金が枯渇、退職年金については2032年に資金が枯渇、更に、2010年可決の『患者保護及び費用負担可能なケア法』に対し、州や業界団体が訴訟を起こしている。最高裁でこの法律は無効にされるだろうとのこと。
 最後はIIABAの規制法問題担当のウェス・ビセット氏による保険業の国際的問題について。二年前設立された連邦保険局(FIO)の機能や役目について説明した。連邦保険局の役目は、州規制のチェック、情報の収集、USTR(米国通商代表)への意見提供などである。但し、州規制や州保険庁への監督権は無い。連邦保険局に対し、IIABAと同様に、AIA(損害保険会社協会)やACLI(生命保険会社協会)も、国内および海外問題について意見書を提出したとのこと。それらをまとめた報告書が楽しみである。TPPについて:日本との契約がどのようになるかはわからないが、韓国との契約を参考にするとのことである。ここでも良い質問が参加者から挙がった。特に、乗合代理店やブローカーの大手企業物件の進出を阻む特定契約・自己契約規制について、IIABAを通じて、USTRに、改定の提案を挙げるようにビセット氏に伝えた。この特定契約、自己契約問題については、野田がビセット氏に資料を送ることを約束。

   来年のIIABA法制度大会は2013年4月16日~19日。ご予定ください!