第18回ベストプラクティス東京セミナー報告
今回のテーマは巨大災害のリスクマネジメント。代理店経営者が巨大災害に備えることは必須である。従業員の安全管理は勿論のこと、このような時にこそ助けを最も必要とする顧客のクレームに対応しなければならない。迅速に対応できるように、通信網や顧客データの管理、御社が被災した場合に備えて仮事務所や備品の手配など、考慮すべき事は多い。
先ず、モリサキ・アンド・アソシエイツの森崎公夫氏が「日本人のリスクセンスを問う」のタイトルで講義した。氏は危険というレンズで世の中を見ることが重要であり、確率と統計でリスク分析を行うことにより、リスクを判断できる、という。そして、日本人の多くがリスクを実感していないのではないか、と疑問を呈する。1千兆円を超える国家債務を放置してきた;税収は40兆円程度;原発事故への対応、などを挙げた。そして、氏はリスクの根源を認識する必要があることを説く。先ず、安心、安全のための計画を策定すること;計画に基づく安全対策、リスクの移転、軽減を行うこと;実行した対策の効果を評価すること;改善点を総括し、改善計画を策定すること、である。
続いて「巨大災害へのエージェントの備えと役割」では、エヌ・エヌ・アイの新邦昭氏、甲南保険センターの武田一男氏、トムソンネットの小島修矢氏と鈴木治氏が巨大災害に関わるテーマで発表を行った。
新氏は、震災直後の判明した事実、現象を述べた。1)津波被害を想定していなかった;AIR社やRMS社の自然災害モデルは、防波堤が強固であったこと、更に、東京湾では津波の被害は重大ではない、とみなし、津波被害を考慮していなかった;2)サプライ・チェーン保険が注目されるかもしれない;今後、物的損害がなくとも、停電や輸送システムの麻痺による損害がカバーされる保険が必要になる;3)生産拠点やサプライヤーの分散の重要性;生産拠点やサプライヤーの分散を進めていた企業が少数であったこと;トヨタも分散化を進めていたが、プリウスは対象外でああたため、震災後4日目で同車の卸値が3倍に跳ね上がったとのことである。
武田氏は巨大災害時のエージェントの役割として被災された顧客の担保内容を調べ、損害を把握すること、BIやBCPが含まれている場合、生産再開に向けての行動プランを作成すること、サプライ・チェーンの状況については顧客とともに状況をチェックすること、である。エージェンシーの備えとしては、緊急対応プランの作成や、何を持って巨大災害とみなすかのきっかけ/誘引(trigger)を設定することが必要であると説いた。
小島氏は、先ず、巨大災害は四種類-個別的、集積的、累積的、政治的・社会的-あることを説明した。これまでの世界の巨大災害6件と保険損害額を示した。そして、東日本大震災の被害額の推計を示した。総額約16兆9千億円をあげ、阪神・淡路大震災の約9兆6千億円との比較を示した。
鈴木氏は「巨大災害のエージェントの備えと役割」の題で様々な問題を提起した。先ず、日本を取り巻く自然災害の状況を説明した。気象災害として、1991年の台風19号、台風が10個上陸した2004年、2005年の米国のハリケーン・カトリーナ、地震災害として、新潟中越地震(04年)、新潟中越沖地震(07年)、東日本大震災を挙げている。超巨大台風として、1959年の伊勢湾台風の被害数値を説明した。更に、巨大災害が損保経営に与える影響として、保険金支払余力、最大予想損害額のシミュレーションについて詳細、且つ、分かり易い説明を行った。
今回も又、実に中身の濃いセミナーでありました。