第42回ベストプラクティス大阪セミナー報告
9月19日にSJNK肥後橋ビルで開催した第42回ベストプラクティス・セミナーの最初の講師は(株) ビットミックスの久保氏。氏はSNS(フェイスブックやツィッターなど)の活用実態につ いて説明した。現在、日本のSNS利用者数は7,764万人とのこと、ネットユーザー(推定 1億83万人)の77%にあたる。久保氏は、様々なSNS毎のユーザー数や利用率の数値を 示し、SNSをマーケティングとして利用することの利点を語った。それぞれSNSの特性を 理解し、それに合わせた情報発信が重要であることを強調した。
同じくビットミックス社の大原氏は翻訳エンジンについて説明した。T-400というこの 商品の精度は95%、それぞれ企業の社内用語を翻訳結果に反映、ワード・エクセル・PPT などのファイルにも対応できるという利点を持つ。大原氏はT-400の取引実績、利用事例、 導入によるコスト削減実例など、分かりやすく説明した。
ソルナ株式会社はシステム開発、ブランディング、リスク対策のための社員研修に携わっ ている。従業員によるネット・トラブルの実例やリスク対処方法についての、大月美里氏 と芳野浩文氏の説明は、実に参考になった。一例は元従業員の悪質な口コミの影響につい てである。悪質な口コミによって、企業が被る損失は、売上減少、従業員応募者の減少、 社員の士気低下、資金繰りの悪化等、数多い。
これまで会社組織としての管理が強過ぎた日本において、従業員が労働環境について意 見を言える口コミサイトは、生まれるべくして生まれたと言える。しかし、サイトへの誇 張や嘘の記述は決して許されるべきではない。デマや嘘の記述は、人身障害として訴えら れる危険性があるが、そのことを認識していない人が多いのではないか?
人身障害には、人の権利に対する損害-例えば、著作権侵害、誹毀(文書による名誉毀ひき 損)、中傷/誹謗(口頭による名誉毀損)など-がある。人身障害保険(日本の保険会社 は現在この保険を引受けていないかもしれない)は、人(法人)の名誉や人格を侵害した、 とか、中傷した、と主張され、訴えられた場合に対応する保険である。会社が、元従業員 によってブランドを傷つけられたと考えた時には、その元従業員を訴えるだろう。会社に 虐げられていると感じ、怒りに任せて口コミサイトに書き込みをしている従業員や元従業 員はそのことを認識しているのか?
某週刊誌は、しばしば「書くべきでないこと」を書き、訴えられ、謝罪したり、賠償金 を支払ったりしている。SNSの時代においては、皆が週刊誌の編集者のようなものである。 口コミサイトや様々なSNSに書き込む時には細心の注意を払わねばならない。
そして企業側:従業員の待遇、教育には細心の注意が必要である。
ソルナ社には、ぜひ、又、講義をお願いしたい。
米国研修報告は甲南保険センターの高知剛司氏と今西明美氏が行った。訪問したエージェ ンシーとIIABAのセミナーについては、7月13日の第41回ベストプラクティス東京セミナー での千秋氏と田中氏の報告に詳しいので今回は高知氏と今西氏の感想のみを要約する。
今西明美氏の感想
エージェンシーの独自性:各専門分野のプロデューサーが、自社エージェンシーを特徴付 け、他社との差別化を成功させている。
エージェンシー動向:小規模エージェンシーは保険会社との交渉力がなく、委託契約を締 結する保険会社数が限られることから廃業に追い込まれる。M&Aによる大型化が進んで いる。又、集合体に属することによって保険会社との交渉力を維持しようとしている。卸 売りブローカー(wholesaler)を通じて、保険商品幅を広げようとするエージェンシーも 多い。
営業体制:AHTやサーリスク・サービスでは、CSR、マーケティング担当、クレーム担 当が皆協力してプロデューサーを支える体制が確立している。
オフィス環境:モニターは一人最低二台設置されていた。クリンガー社では、三台設置さ れており、三台の場合、30%生産性がアップするとのことである。又、健康のため、ス タンディング・デスクが導入されていた。従業員にとって働き易い環境を整えることで生 産性を高めようとする工夫がなされている。
高知剛司氏の感想
トレーニング体制が充実、教育機関や手段も多く、業界全体が教育に取り組んでいる。 業界全体の人材の流動性が高く、規模の大小に関わらず、エージェンシーに働く人たちの レベルが高い。従って、日本に多い片手間の兼業代理店は米国では存在し得ない。
ハフ保険のような家族経営のエージェンシーでも独自のテクノロジーを構築、成果を挙 げている。日本のように保険会社のお仕着せのテクノロジーではなく、多くが独自のテク ノロジーに投資している。
それぞれのエージェンシーが、ニッチに特化することで強みを得ている。
広い世界に触れ、現地の方々や同行した方々との交流を通じて、自身を再認識すること が最大の収穫である。それは今後の仕事に対するモーティベイションに繋がる。
発表者の皆様、ありがとうございました!