第32回ベストプラクティス福岡セミナー報告

今回、基調講演は、元金融庁検査局統括検査官兼副監理官の堀兼三氏による「改正保険業法への対応(保険募集ルールの見直し及び保険募集人の体制整備について)」である。保険業法改正の背景には、少子高齢化の進行、国民の保険に対する要望変化、保険ショップや大型代理店やインターネット販売などの多様化の進展がある。改正の目的は、保険の信頼性の確保と保険市場の活性化である。前者については保険販売の基本ルールとして、意向把握義務や情報提供義務の導入や、販売者規制の整備が含まれる。後者については、海外の金融機関を買収した際の子会社業務規制の特例拡大、仲立人に関わる規制緩和などがあげられた。

「当社の経営現状報告」は今回で6回目である。最初はプライアント株式会社の橋口久氏。創業は1981年、現在の従業員数は21名である。経営理念は「安心をシンプルに、安心を活力に」だ。理念と社員の顔写真をイラスト化したボードが事務所に掲示されている。売上は05年以降着実に上昇している。同社の特徴は経営計画書の発表会を通じて成長を図ること、IIABJで学んだCSR制度の導入、FCではない独自の保険ショップの運営である。更に、トヨタ生産方式の「カイゼン」の導入や若手の意見を積極的に取り入れていることだ。

次の報告者は日商保険コンサルティング株式会社の橋本安太郎氏である。日商保険は1920年に創業者の橋本安次郎氏が、醤油屋に嫁いだ姉から保険部門を譲り受け、保険の専業代理店を開いたことから始まった。九州初の専業代理店と考えられている。現在、従業員数29名、売上は3億7千万円である。同社の強み、弱み、機会、脅威を挙げてくれた。強みは:人脈有り、中小企業向けのノウハウ有り、社員年齢層が若く、有能であること。弱みは:個人・個社に特別な対応ができない、自社独自商品を作ることができない、保険会社の施策によるところが大きい、保険以外の商品なし。機会は: 中小企業に特化した代理店が少ない、機関代理店のプロ代理店への譲渡傾向の増大、新リスクの増加、経費見直し機会の増大。そして、脅威は:銀行や他業種の保険参入、インターネットを通じた保険販売、国内保険会社による直販、手数料の減額傾向、保険会社減少による選択肢の減少、顧客の経営悪化、生保商品の販売停止や税制変更、である。

自社の強みと弱みをこれほど明確に認識し、業界や社会変化を把握できていらっしゃるのですから、将来の難題を乗り越えていけるものと信じます。