第29回ベストプラクティス福岡セミナー報告

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2月19日、例年通りAIU保険会社の福岡事務所で第29回ベストプラクティス・セミナーを行った。基調講演はIIABJ会長の武田一男氏による「Independent Agency(独立代理店)の価値とは」であった。次に「IIABAの成立ち、IIABJの成立ち」について武田会長と野田IIABAアジア部門ディレクターが話し、続いて「当社の代理店経営現状(その2)」として、三人の会員が自社経営について語った。ピースプランナーの中村賢次氏、キャリアリングの吉田抄都子氏、岡山保険センターの渡辺眞一氏である。
武田氏は、米国と日本の保険代理店の独立性の違いについて説明した。米国においては、複数の保険会社と取引を行っている「独立エージェント(又はブローカー)」と、一社だけと委託契約を維持する専属エージェントには、権限や業務内容に大きな違いがある。米国の独立エージェントは「エージェント(=代理人)」という名称が付されているが、権限は「ブローカー」と同様である。例えば、契約ポートフォリオは、独立エージェントにとって、売却可能な資産である。一方、日本の場合、乗合代理店は、複数の保険会社と取引を行うが、米国の「独立エージェント(又はブローカー)」の同じような権限を有しない。
日本の専属代理店と乗合代理店の違いについて氏は次のように説明する:専属代理店は、顧客が直面しているリスクをカバーする保険を、保険会社が持っていない(商品として持っていない又は引受け拒否をした)場合、顧客を失ってしまうかもしれない。一方、乗合代理店は、顧客が直面しているリスクを、先ず、査定し、それに対応するカバーを複数の保険会社の中から、選んだり、組み合わせたり、リスク管理サービスを提供したりすることができる。又、武田氏は、米国には3,200社もの損害保険会社が、様々な商品を競っていることに比べ、三メガ損保に集約された日本の市場を憂慮している。
ピースプランナーの中村氏は、同社の経営理念、特徴、課題、反省と展望について述べた。特徴の強みとして、ハウスビルダーとの提携による個人火災から他種目への拡販、他業種との提携による事故処理、士業との連携、弱みとして、CSRの不設置によるプロデューサーの負担大、研修生であるために乗合承認が難しいこと、更に、売上の偏り、を挙げている。来店型ショップの利点について。幅広い顧客と出会えること、顧客ニーズの収集、成約率が高いこと、法人契約につながるケースがあること;一方、不利な点としては、費用対効果や顧客数が安定していない、常に宣伝広告が必要、ライバル店の増加による質低下、リスクの高い顧客が多い、等を挙げている。中村氏は昨年米国研修に参加され、それをきっかけにIIABJに加入された。米国研修の感想が私には実に新鮮であったことを加えておく。
キャリアリングの吉田氏は自社経営の理念として「顧客に誠実に対応する;日々創意、工夫を凝らし、価値を高め、社会貢献に力をいれる;働くことに夢と希望を持つ、そして仲間を信頼する」ことを挙げている。同社の顧客内訳は法人8割、個人2割と法人が主である。対象とする法人顧客の業種は、建設、医療、食品、不動産などである。強みとして、既存客の経営が安定していることによる手数料の自然増収や、企業に対し、保険に限らず、労務、財務、法務の面においても助言サービスを提供していることを挙げている。今後の課題としては一人でできることの限界を挙げ、営業と内務の両方における人材の獲得、維持、トレーニングについて説明した。
渡辺氏は岡山保険センターを1970年に設立した。初年度の手数料収入110万円を、2014年12月に1億円に成長させている。スタッフ2人から現在の10名に至るまでの経営状況や雇用問題について、ユーモアを交えながら、実に軽妙な話しぶりで語っていただいた。特徴として、顧客満足を目指した事故処理体制を挙げている。事故対応に3人の専任スタッフを置いている。その結果、既存顧客による紹介;苦情の減少;スタッフが仕事を楽しんでいる;営業が事故対応に関わる必要なし、など多くの利点を得ている。渡辺氏には、又、将来のセミナーでお話をお願いする予定である。